ライチョウ(6) — 生息地の整備と外来種対策

ライチョウ(6) — 生息地の整備と外来種対策

※本コラムは2025年6月に加筆修正しました。

1. はじめに

アルプスの稜線を吹き抜ける冷涼な風。その過酷な環境を舞台に、長い年月をかけて独自の生態を築いてきたのが二ホンライチョウ (Lagopus muta japonica) です。しかし近年、気候変動や観光圧、外来種の侵入 など複合的な要因により、その生息環境が急速に脅かされています。

最新の研究によると、2081年~2100年までに、ライチョウの生息適性地の99.6%が失われる可能性がある ことが示されています​。そのため、現在進められている「生息地の整備」や「外来種対策」だけでなく、将来的な生息地の保護や適応戦略の確立 が急務となっています。本コラムでは、ライチョウの生息環境の変遷と、気候変動に適応するための最新の保全活動について詳しく見ていきます。

2. 生息環境が抱える問題の変遷

2-1. 1950年代~1970年代:保護の黎明期

1955年にライチョウは国の特別天然記念物に指定されました。しかし当時は、指定されたことで密猟や狩猟は規制されたものの、「生息地そのものの環境保全」という考え方は、まだ十分に浸透していませんでした。高度経済成長期の山岳開発や登山道整備は「人間の利便性向上」が優先され、ライチョウが利用するハイマツ帯が切り開かれるケースもあったようです。

2-2. 1980年代~1990年代:認識の高まり

観光登山やスキー場開発などによる山域への人の出入りの増加に伴い、高山帯の生態系への影響が徐々に問題視されるようになりました。特に夏山シーズンには、登山道沿いの踏み荒らしやゴミの散乱が高山植物にダメージを与え、ライチョウの餌となる植物が局所的に減少する事例も報告されています。また、シカの個体数増加に伴う高山植生への食害も、ライチョウの生息地喪失や食物資源の競合を引き起こす要因として懸念され始めていました。

2-3. 2000年代以降:総合的な生息地保全

地球温暖化による気候変動への懸念が本格化し、ライチョウの生息地の大幅な減少が予測される中で、環境省や各自治体は総合的な保護施策の立案に乗り出しました。これには、侵入性の外来捕食動物や人間活動により増加した在来捕食動物への管理対策、植生回復プロジェクト などが含まれます。

「第一期ライチョウ保護増殖事業実施計画」は平成25年(2013年)に策定され、令和2年(2020年)から令和6年(2024年)には「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画」へと移行し、より組織的かつ広域的な対策が可能になっています。第二期計画では、ケージ保護事業が確立した手法として活用され、緊急時の個体数減少を食い止める手段として一定の成果を上げています。また、中央アルプスにおけるニホンザルの追い払い事業が、サルをライチョウのなわばりから遠ざけることに成功しています。火打山では、イネ科植物の除去による植生改善がライチョウの利用頻度上昇につながっています。

腸内細菌研究と飼育個体の健康管理

近年、野生ライチョウの生存に不可欠な腸内細菌が、その生体防御能力や消化機能の向上、さらには食物に含まれる毒物の分解や病原体に対する感染抵抗性の向上に寄与するなど、健康維持に重要な役割を果たすことが明らかになっています。

この知見に基づき、野生ライチョウの盲腸糞から腸内菌叢の解析と有用菌の分離が進められています。研究では、特にタンニンを豊富に含む食物の消化に役立つ細菌や、飼育下のスバールバルライチョウから分離された多剤耐性緑膿菌に対して抗菌活性を示すLactobacillus apodemiなどの乳酸菌が特定され、これらの菌が飼育個体への投与菌として検討・利用されています。

飼育下のライチョウに対しては、孵化直後からの凍結乾燥糞便の投与による腸内細菌叢の再構築が試みられています。これにより、抗生物質を使用せずとも野生個体と同程度の育雛率を達成し、感染症による死亡率の低下といった保健効果が見られています。糞便投与と高山植物の採餌を組み合わせることで、飼育個体の腸内細菌叢を野生型に近づけることに成功し、野生復帰個体の生存率向上が期待されています。また、タンナーゼ活性の測定は、腸内細菌叢構築の重要な指標として活用されています。さらに、野生個体から採取した精子を用いた人工授精による雛の誕生にも成功し、遺伝的多様性の確保にも貢献しています。

2-4. 気候変動による生息地の縮小

気候変動は、ライチョウの生息環境に深刻な影響を与えると予測されています。特に、高山帯に生息するニホンライチョウは、その世界的な分布の南限に位置しており、すでに山頂付近に生息地が広がっているため、これ以上の高地への移動が困難であることから、気候変動に対して著しく脆弱であると考えられています。

ある研究によれば、2081年から2100年までの気候シナリオに基づくと、ニホンライチョウの潜在的生息地は現在の0.4%にまで激減する可能性があると予測されています。これは、ヨーロッパのライチョウ個体群で予測される減少率(約54%)と比較してもさらに高い減少率であり、ニホンライチョウが地球温暖化に対して最も脆弱な亜種である可能性が指摘されています。
この研究は、標高の高い一部の地域のみが「気候変動レフュージア(退避地)」として機能する可能性があることを示唆しました。これらの持続可能な生息地は、比較的冷涼な気温、豊富な積雪、少ない夏季の降水量といった気候的要因と、稜線に近い、風下側、緩やかな傾斜といった地形的要因を併せ持つ場所であると予測されています。

つまり、温暖化の進行によって標高の低いエリアからはライチョウが姿を消し、より高所へと追いやられることが予測されていますが、日本アルプスの高山帯では、これ以上高い場所へ逃れることができません。
このような状況から、2012年に絶滅危惧Ⅱ類(VU)から絶滅危惧ⅠB類(EN)に引き上げられたニホンライチョウの生存を確保するためには、残されたわずかなレフュージアとなる場所を重点的に保護する戦略が喫緊の課題となっています。

これには、保護レベルの引き上げ、人間の立ち入り制限、食料廃棄物管理の厳格化といった、現在の管理方針の見直しが含まれます。また、ニホンジカなどの草食動物による高山植生の食害や、捕食者の増加といった、気候変動以外の要因による個体数減少への対策も同時に求められています。将来的には、生息地の喪失に直面するライチョウのために、「アシストマイグレーション(移送による個体群の移動)」のような適応戦略も検討する必要があるかもしれません。

3. 山域別・生息地整備の具体例

3-1. 北アルプス(立山・槍穂高・後立山連峰など)

  • 立山連峰(富山県)
    富山県が中心となり、「とやまのライチョウサポート隊」(2020年発足) が活動を行っています。環境省や中村浩志国際鳥類研究所、富山県立山カルデラ砂防博物館などと連携し、登山道の拡張を最小限に抑える工夫や、ハイマツ帯の再生に取り組むプロジェクトを進めています。夏場には定期的なパトロールやライチョウ観察イベントを行い、登山者への啓発活動にも力を入れています。

  • 槍・穂高連峰(長野県・岐阜県)
    人気の山域ゆえ登山者も多く、踏み荒らしや野営地の整備が課題とされています。長野県側では「ライチョウ保護スクラムプロジェクト」(2020年開始) により、高山植物の育苗・移植等の試みが行われています。また、登山道脇の脆くなったハイマツ根系を保護するため、ロープや柵を設置し、むやみな立ち入りを防ぐ仕組みづくりが進行中です。

  • 後立山連峰(白馬岳など)
    白馬岳周辺では夏スキーやトレイルランイベントなどの利用が増え、登山道外を走る行為が植生に悪影響を及ぼすケースが指摘されました。そのため地元行政や山小屋関係者が連携し、「イベント開催時のルート規制」「スタッフによる植生監視」などを実施。高山帯特有の土壌流出を防ぎつつ保全する取り組みが、2010年代後半から本格化しています。

3-2. 中央アルプス(木曽駒ヶ岳・宝剣岳周辺)

中央アルプスでは、かつてライチョウが絶滅状態にあったものの、近年個体の飛来が確認され、環境省は「中央アルプスにおけるライチョウ野生復帰実施計画」を本格的に進めています。この計画により、中央アルプスではライチョウの個体数が順調に増加しており、目標達成も前倒しで進んでいます。


この野生復帰事業は、中村浩志先生ら専門家が深く関与し、協力する形で進められており、以下の特徴があります。

  • ケージを用いた保護
    孵化した雛を保護し、野生環境に段階的に慣らすためのケージ保護事業が実施されており、その生存率の高さが確認されています。この方法は、野生復帰個体の後期野生馴化手法としても活用されています。

  • 発信機装着によるモニタリング
    放鳥したライチョウには発信機が装着され、移動範囲や生存状況が追跡調査されています。これにより、野生個体と同程度の生存率を示す個体も確認されており、事業の成果につながっています。

  • 気候変動レフュージアの特定とアシストマイグレーションの検討
    気候変動による大幅な生息地縮小が予測される中で、比較的冷涼な気温、豊富な積雪、少ない夏季の降水量といった気候的要因と、稜線に近い、風下側、緩やかな傾斜といった地形的要因を併せ持つ「気候変動レフュージア(退避地)」が、ライチョウの生存を維持する持続可能な生息地として特定されています。このような場所を重点的に保護する戦略が求められており、「アシストマイグレーション(移送による個体群の移動)」といった適応戦略の可能性も検討されています。

    •捕食者・競合種対策
    ライチョウの個体数減少要因となる地上性捕食者(キツネ・テン)の捕獲や、ニホンザルの追い払い事業が実施されており、サルについては出現頻度の減少といった確実な成果が見られています。

このプロジェクトは、気候変動下でのライチョウ保全の新たなアプローチとして注目されており、今後のモデルケースとなる可能性を秘めています。

3-3. 南アルプス(北岳・間ノ岳・鳳凰三山など)

南アルプス国立公園として指定されているエリアでは、環境省や山梨県・静岡県などが連携して「高山帯の生態系モニタリング」を重視しています。2007年頃からライチョウの巣域を重点的に調査し、過度な踏み入りやテント設営を制限するガイドラインを作成。2010年代後半には、夏の登山道維持工事と並行して、「高山植物苗の移植実験」を行い、ハイマツやコマクサなどの再生を図る取り組みが報告されています。

3-4. 火打山(新潟県)

新潟県妙高地域にある火打山も、ライチョウの貴重な生息地です。「ライチョウの聖地」と呼ばれるほどの豊かな生態系が残る一方、鹿やテンの増加による食害・捕食被害が問題化してきました。そこで、一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所や妙高市などが共同で捕獲ケージの設置や「防鹿ネット」の試験導入を実施。並行して、踏み荒らされた木道周辺の植物復元作業を進めるなど、生息地環境を総合的に回復させるプロジェクトが動いています。

4. 外来種対策の進展

4-1. 捕食者(キツネ、テン、ノネコなど)

ライチョウの個体数減少に拍車をかける要因として、近年特に懸念されるのが高山帯への捕食者の進出です。気候変動に伴い、ニホンジカやニホンザル、キツネ、テン、イノシシ、ツキノワグマなどの地上性哺乳類が高山帯へ進出し、ライチョウへの捕食圧の増加や、ライチョウの餌となる高山植物との競合が加速する可能性が指摘されています。実際に、キツネやテン、オコジョ、ハシブトガラスといった捕食者がライチョウの巣やヒナを襲う事例が他の山域で報告されており、中央アルプスでは、卵や成鳥の生存率が高い一方で、孵化後のヒナの生存率が低下傾向にあり、捕獲しやすく発見しやすいヒナへの捕食が集中している可能性が示唆されています。

防除策

環境省や関係機関は、捕食圧の低減に向けた多角的な対策を実施しています。

  • 捕獲事業
    中央アルプスでは、2020年から5年間でテン9頭、キツネ1頭が捕獲されました。2024年度はテン4頭、キツネ1頭が捕獲されています。捕獲効率は設置箇所を増やしたにもかかわらず、昨年と同数の捕獲であったことから、若干低下していると報告されています。

    南アルプスの北岳周辺では、猟師からの捕獲技術継承を目指し、環境省や請負業者が主体となって捕獲を進める体制を構築中です。従来の「かご罠」に加え、警戒心の強い捕食者に対応するため、「足くくり罠」や「緩衝性足はさみ罠」の導入も検討されており、特に捕獲効率の高かった早春に集中的な捕獲が計画されています。緩衝性足はさみ罠は、ライチョウのヒナの錯誤捕獲を避けるため、夜間を中心に設置される予定です。
    捕獲効率は山域や時期によって異なり、南アルプスでは捕獲効率が低下傾向にあり、より効率的な捕獲手法の開発が急務とされています。

  • 糞分析調査
    捕食者の食性や高山帯での行動を解明するため、哺乳類の糞のDNA分析が実施されています。中央アルプスで採取された糞からは、2年連続でライチョウのDNAは検出されなかったものの、テン6個体、キツネ7個体が識別されており、特定の個体が広範囲を移動している可能性が示唆されています。これは、高山帯で食べた獲物の糞が高山帯に残されていない可能性や、卵や成鳥の生存率が高いため、捕食者の糞からライチョウDNAが検出されにくい現状を示唆しています。

  • ニホンザルの追い払い:

    中央アルプス駒ヶ岳周辺では、2022年からのニホンザル追い払い事業により、出現頻度が年々減少し、サルのライチョウ生息域への接近を防ぐ上で確実な成果が得られています。この事業は今後も継続が見込まれています。

これらの対策は、ライチョウの生息個体数の安定的な維持に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。

4-2. 外来植物と病原体

高山帯におけるライチョウの生息環境は、外来植物や病原体の影響も受ける可能性があります。

  • 外来植物

    DNAメタバーコーディングを用いた食草分析により、高山帯に自生しないイネ科植物であるCalamagrostis longisetaが、ライチョウの食物資源として検出されました。これらの植物は登山者によって持ち込まれた可能性**が指摘されており、外来植物が高山帯に侵入し、ライチョウの食性に取り込まれている現状が明らかになっています。

    火打山では、ライチョウの主要な食物資源である高山植物の生育環境を改善するため、イネ科植物の除去が行われています。これにより、火打山頂上事業区ではイネ科植物の除去量の減少に伴いライチョウの利用頻度が増加しており、気候変動による高山植生のタイプ変化への適応策としても重要であると考えられています。

  • 病原体(アイメリア原虫など)

    野生復帰を目指す飼育個体においては、このアイメリア原虫を人工的に付与する取り組みが行われています。これは、孵化直後のヒナの腸管が無菌状態であるため、野生個体由来の菌を取り込み定着させることが重要であるという研究知見に基づいています。微量のオーシスト(原虫の卵嚢)投与でも多量の排出が確認されることから、ニホンライチョウが本来の宿主であり、容易に感染が成立する可能性が示唆されています。


    飼育個体における高濃度のアイメリア感染は健康被害を引き起こすことが明らかになっていますが、野生個体における感染動態や健康被害については不明な点も多く、一部の放鳥個体についてはあえてアイメリア原虫を付与しない試験的な放鳥も検討されています。

5. 人と自然が支え合う仕組み

5-1. 地域コミュニティとの連携

ライチョウの生息地整備と外来種対策は、行政や研究者だけでなく、地元住民、登山者、観光業者など様々な関係者との協力が不可欠です。環境省や関係機関は、ライチョウを含む高山生態系保全の周知のため、捕食者対策やニホンザルの追い払いに関するポスター作成などの普及啓発活動に注力し、企業との連携による事業全体の周知やイベント開催などを通じて啓発を進めています。また、各地の地方公共団体などと調査結果だけでなく手法の共有も行い、各地域の調査が比較検討できるように努める方針です。ただし、現時点では、生息地現地での登山者への普及や登山者との事業連携は未実施の項目が多く、今後の課題とされています。

長野県が推進する「ライチョウ保護スクラムプロジェクト」や富山県の「とやまのライチョウサポート隊」 では、一般参加型の調査や清掃活動、捕獲器の見回りなどを実施し、地域全体でライチョウを守る機運を高めています。

5-2. 観光と保護のバランス

観光・レジャーが盛んな山域において、経済効果と生態系保全の両立は大きな課題です。ライチョウ保護増殖事業では、国立・国定公園における管理事業と山岳関係者との連携が重要と認識されています。しかし、個々の事業で地元関係者との連携は進められているものの、ライチョウ事業を公園の管理業務の中に位置づけることには多くの課題があり、今後の取り組みが必要です。また、地域横断的な調査データについて共通スキームでの取得及び情報共有に向けた体制構築も開始されています。

6. 今後の展望

6-1. 第二期保護増殖事業計画の先へ

「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画」は、当初令和2年(2020年)から令和6年(2024年)までの期間で実施されていましたが、令和7年度(2025年)まで1年延長される見込みです。この計画では、環境省レッドリストにおいて、ライチョウの評価を絶滅危惧IB類(EN)から絶滅危惧Ⅱ類(VU)へダウンリストすることを目標としています。この目標は、特に中央アルプスにおいて自立個体群として認定できる見込みが立てば達成とみなされるとされています。

モニタリング技術の進化に関しては、捕獲個体への発信器装着による行動圏調査が継続して実施されることで、ライチョウの動態のより精密な追跡が可能になります。これにより、捕食者対策の効果検証(例: キツネ・テンの捕獲効果や、ニホンザルの追い払いによる出現頻度の減少)や、火打山におけるイネ科植物除去による植生改善とライチョウの利用頻度上昇の確認 など、生息地管理の精度向上が期待されます。また、令和8年(2026年)から10年度(2028年)にかけて中央アルプスにおける生息状況調査が実施され、令和11年(2029年)にはそのデータを用いて個体群の将来予測が行われる予定です。

6-2. 長期的視点の保全と教育

ライチョウが高山帯で生きていくためには、地球温暖化による生息地の劇的な減少予測、観光圧、そして外来種や在来捕食動物(例: キツネ、ニホンザル、シカ)の高山帯への進出とそれに伴う捕食圧・競合の増加 など、複数の複合的なリスクに同時に対応する必要があります。特に、日本のライチョウは分布の南限に位置し、既に山頂域に限られているため、気候変動による影響は他の地域よりも深刻であると予測されています。このような状況に対応するため、アシストマイグレーション(個体の別地域への移動)といった適応戦略の検討も必要とされています。

長期的な保全の観点からは、「普及啓発」と「人材育成」が今後の重要な課題として挙げられています。具体的には、生息地現地での登山者への普及や登山者との事業連携は未実施の項目が多く、また、調査研究体制は一定強化されたものの、人材育成面では大きな成果は得られていないことが指摘されています。今後は、捕食者対策やニホンザルの追い払いに関するポスター作成、企業との連携による事業全体の周知やイベント開催などを通じた普及啓発、そして各地の地方公共団体などと調査結果だけでなく手法の共有を行い、各地域の調査が比較検討できるように努める方針が示されています。

7. おわりに

ライチョウは、小柄ながら高山の過酷な環境にしっかりと根付いてきた、氷期の名残 とされる特別な存在です。その小さな命を守るためには、一部の専門家だけでなく、様々な関係機関との情報交換や地元関係者との連携 を通じた地域や社会全体での取り組みが求められています。山岳観光の経済的恩恵を享受しつつも、そこで生きる生命を大切に扱うことは、持続可能な生態系保全と人間活動の共存にとって不可欠な要素です。
山岳がもたらす観光の恩恵を享受しつつも、そこで生きる生命を大切に扱う——それが、自然と人間が共存できる道ではないでしょうか。

次回は、研究者たちがどのような会議や取り組みを行いながら、ライチョウの最新データを共有し、保護活動に活かしているのか。さらに、人工繁殖や野生復帰にもつながる最先端の研究動向を探っていきます

【出典、参考文献】

  1. 環境省 (2020) レッドリスト2020
    https://www.env.go.jp/press/107905.html

  2. 環境省 信越自然環境事務所 (2020) 第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画
    https://chubu.env.go.jp/shinetsu/content/900117622.pdf

  3. 中村浩志, 小林篤 (2018) 「ライチョウの群れ構成と標高移動の季節変化に関する研究」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/67/1/67_69/_article/-char/ja/

  4. 一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所 活動紹介
    https://hnbirdlabo.org/index.php/activity_introduction/

  5. 長野県 (2020) 「ライチョウ保護スクラムプロジェクト」
    https://www.raicho-nagano.jp/

  6. 富山県 (2020) 「とやまのライチョウサポート隊」
    https://raicho-mimamori.net

  7. 環境省 信越自然環境事務所 ライチョウの概要と保護増殖事業計画
    https://chubu.env.go.jp/shinetsu/wildlife/rockptarmigan/index.html

  8. Masanobu Hotta, Ikutaro Tsuyama, Katsuhiro Nakao, Masaaki Ozeki, Motoki Higa, Yuji Kominami,Takashi Hamada, Tetsuya Matsui, Masatsugu Yasuda and Nobuyuki Tanaka(2019) Modeling future wildlife habitat suitability: serious climate change impacts on the potential distribution of the Rock Ptarmigan Lagopus muta japonica in Japan’s northern Alps

  9. 環境省 中部地方環境事務所 ニホンライチョウ保護増殖に資する腸内細菌の研究
    https://chubu.env.go.jp/shinetsu/content/900117369.pdf

  10. ニホンライチョウ保護増殖に資する腸内細菌の研究
    https://www.erca.go.jp/suishinhi/seika/db/pdf/interim_result/4-1604.pdf

  11. 市立大町山岳博物館 「ライチョウ会議報告書」
    https://www.omachi-sanpaku.com/sanpaku/grouse/

  12. 環境省 信越自然環境事務所 令和6年度 保護増殖検討会資料
    https://chubu.env.go.jp/shinetsu/wildlife/rockptarmigan/R6-1.html

(上記のリンク先は公開時点のものであり、変更される場合があります)


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